“アフリカでメガネ売れるの?”、”アフリカの人って、目がいいんじゃない?” と思われる方が多いかもしれません。昔、日本の眼科の先生に「ケニア(マサイの村)に行って、視力が回復して帰ってきた人がいるという噂があった」という怪しい話も聞かされたことがありました。また、アフリカの街中を歩いている人は、あまりメガネをかけていないように見えるかもしれません。
しかし実際の状況は異なります。特に都市部では先進国と同様、携帯電話やパソコンの普及に伴い、視力の低下が増えています。ただし、目の検査を受ける機会がないために視力の問題に気付いていない人が大半です。
私立の大学(比較的お金に余裕がある層)では、実は半数以上の生徒がメガネを持っているという話もあります。ただし、メガネをずっとかけていると視力が低下するという誤解が広まっており、授業が終わるとメガネを外す人も多いのです。
このように、目や眼鏡に関する正確な知識や情報がないために、適切な対処がとられていない可能性あります。
アフリカのJINSモデル、Lapaire
今回、AAICが運営するアフリカ2号ファンドから出資したのは、2018年に設立されたスタートアップ「Lapaire」です。彼らは主にコートジボワール、トーゴ、ブルキナファソなど西アフリカを中心に、東アフリカのウガンダ、ケニアを加えて、56店舗(2023年10月現在)のメガネチェーンを展開しています。彼らは日本の「JINS」や「Zoff」のような3つの価格帯(例:レンズ込みで35USドル、50USドル、90USドルなど)を提供しており、注文後、24-48時間以内に商品を受け取ることができます。
写真1:店舗の写真(出所:筆者)
同社は実店舗だけでなく、オンラインでもメガネの販売を行っています。オムニチャネルで大学生を含む若年層をターゲットとし、Instagramなどでインフルエンサーを活用したマーケティングを実施しています。
写真2:Lapaireのウェブサイト
また、デジタル化された運営体制を持ち、店舗での紙の使用は最小限に抑えています。
写真3:視力検査の予約システムと、顧客登録画面
(出所:左_同社ウェブサイト/右_筆者)
一方、アフリカ最大のメガネチェーン「OPTICA」は、ケニアを中心にウガンダやルワンダなど東アフリカで展開しており、約80店舗を運営しています。彼らはRayban、Tommy Hilfiger、Emporio Araniなどの高級ブランドのメガネを取り扱っており、その価格帯は日本と大差ありません。
写真4:OPTICAの店舗(出所:OPTICA Instagram)
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ケニアでは、保険でメガネが買える!?
ケニアでは、目の検査費用に加え、なんとメガネの購入費用も保険の対象です。例えば、ケニアの大手保険会社である「AAR」が提供する「Platinumプラン」では、年間最大25,000ケニアシリング(約25,000円)までがカバーされ、これはメガネの購入費用に充てることができます(安いプランでは年間5,000ケニアシリングが上限)。
ただし、ケニアにおける民間保険の加入率はまだ低いのが実態で、Lapaireは保険に加入していない顧客が主要なターゲットです。健康診断の制度もないため、多くの人々は目の検査を受けたことがありません。そのため、大学などで無料の検査を行うことで、新規の顧客を獲得しています。
5-10年後には、アフリカのメガネチェーンのM&Aが起きる
これまで、アフリカでは中小の地元のメガネ屋から始まり、その中から「OPTICA」のような高価格帯を提供するチェーンが生まれました。現在、Lapaire以外にも3プライスモデルのスタートアップが出てきており、VCから資金調達を行っています。
アジアでもインドの「Lenskart」が2,000店舗以上を展開し、日本の「Owndays」(田中社長)の株式の大半を購入するなど、統合が進んでいます。アフリカでも今後競争が激化し、アフリカにおいてメガネチェーンのM&Aが起きると考えています。
毎月1万人、年間で10万人以上のデータが蓄積されている
アフリカではデータの不足が一般的に言われていますが、特に眼科データは殆どありません。Lapaireでは、10,000人以上/月の目の検査データが蓄積されています。また、視力検査以外に眼底検査を行えば、白内障、緑内障、糖尿病性網膜症だけでなく、動脈硬化、高血圧症、脳腫瘍などの早期発見にも役立ちます。
今後、Lapaireでは規模を拡大し、さらに多くの検査項目を導入する計画が進行中です。日本には優れた眼科検査機器メーカーがありますので、積極的にパートナーシップも検討中です。
また、AAICでは2023年7月にナイロビにて医療現場の視察プログラムを実施しました。日本から眼科医の先生にもご参加頂き様々な医療施設の中で眼科に関わる施設へも訪問しました。
ケニアのナイロビにて、医療現場の視察プログラムを行いました
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