世界各国でVC投資を行っているPartechが、“2020 Africa Tech Venture Capital Report”を発表。2020年は世界中がCOVID-19パンデミックの影響を受けたが、アフリカのVC投資(金額ベース)も例外ではなかった。但し、調達件数は引続き増加を続けているなど、2021年の巻き返しが期待される。
*以下、一部の分析を除いて主にPartechのレポートからの引用
<投資件数は増加したが、調達金額は減少>
2020年の投資件数は359件と、パンデミックにも関わらず前年比+44%。これは世界の他の地域では見られない結果となった。アフリカのVC投資は、Partechが調査を開始した2015年から一貫して増加を続けている。
一方、調達金額は14.3億米ドルと、前年比▲29%で着地。1件当たりの平均調達金額は3.9百万米ドルと、2019年の8.1百万米ドルの半分以下となっている。これは、多くの投資家が金額を抑えざるを得なかったこと、またスタートアップ側は調達条件が望ましくなかった(例えば、市場の見通しを踏まえ投資家からの企業価値の評価が下がる)ため、調達を先延ばしにした、また金額を抑えて調達をした結果と考えられる。
<調達金額トップ4か国で、アフリカ全体の80%を占める>
調達金額ではナイジェリアが307百万米ドルと、昨年に続き首位となった。その後、ケニア、エジプト、南アフリカと続き、トップ4か国でアフリカ全体の80%を占める。
一方、件数ではエジプトが86件(前年比+83%)でトップ。次いで南アフリカは72件(前年比+9%)、ナイジェリアが71件(前年比+87%)。ケニアはトップ4の中で唯一増加しておらず、前年と同じ52件にとどまり、トップ3から外れる結果となった。
この点について、筆者は在ケニアということもあり、また読んで下さっている方でケニアに関心が高い方もいると思われるので、少し考えてみたい(ここからはPartechの引用ではない)。
パンデミックの影響は程度の差はあるものの、どの国も影響を受けていた。どちらかというとケニアは他の3か国と比較すると、混乱は少なかった方ともいえる。では、何故エジプトやナイジェリアが大きく増加したにも関わらず、ケニアは増えなかったのか。
以下の表はテック企業の創業者の国籍割合を国別に分析したものである。右側4か国がちょうど上記のトップ4だが、灰色がexpats(外国人)、緑色が自国民(留学経験で更に色分け)。ご存じの方もいらっしゃるかもしれないが、ケニアは比較的外国人の起業家の割合が他国に比べて多いことで知られている。
<国別テック企業の創業者の国籍割合 自国民 vs Expats(外国人)>
ケニアだけではないが、外国で活動している起業家にとっては、難しい1年だったと考えられる。昨年のコロナ渦、ケニアに乗り込んで事業を本格的に始めた起業家もあまりいないだろう。また、彼らは比較的海外(母国)の投資家との関係が強く、投資家もパンデミックの影響を受けており、海外への投資は難しかった。一方、他の3か国は比較的自国民の起業家が多く、地元のエコシステム、投資家との関係も強く、その底堅さが表れたと考えられる。
2021年はまた状況も変わってくると予想されるが、ケニアは昨年、自国民の起業家を想定したStartup Billを議会に提出するなど、地元のエコシステムの強化にも乗り出している。課題は多いが、中長期的には市場の成長に寄与することを期待したい。
以上、Partechのレポートを参照してきたが、同レポートではセクター別のデータなども掲載されている。興味がある方は以下のリンクから。
https://partechpartners.com/2020-africa-tech-venture-capital-report/
また、他にもアフリカスタートアップの調達関連のレポートが発表されているが、中にはPartechと異なり“2020年調達金額は増加”となっているものもある。これはそれぞれのMethodology(特に調査対象企業の定義)が異なり、またどこも公開されていないデータを含めて分析しているため、その差が出ている。異なるレポートを比較するよりは、それぞれのレポートの傾向を理解することで見えてくるものがある。
文章:石田 宏樹(AAIC ケニアオフィス代表)
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