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アフリカにおけるティラピア養殖事業の急成長とビジネスチャンス

今回はアフリカにおける重要なタンパク質の摂取源であるティラピアの養殖業の成長ぶりと、養殖ビジネスの可能性について最新状況をご紹介させて頂きます。

世界のタンパク質の需給状況

上記のチャートは、世界各国の一人当たりのタンパク質供給量を一人当たりのGDPに基づいてプロットしたものです。プロットの大きさは人口を示しています。ご覧の通り、強い相関関係があります。富裕な国ほどタンパク質の摂取量が多いのは当然のことですね。

左下には多くのアフリカ諸国が位置していることが分かります。たとえタンパク源へのアクセスがあっても、経済的に十分な摂取ができない人々が多いのも事実ですが、それ以前の課題として需要と供給に大きなギャップが存在します。アフリカでも南アフリカを中心に、代替プロテインに焦点を当てたスタートアップが存在しますが、これらは巨大な需要と供給のギャップを埋めるにはまだ十分ではありません。肉、乳製品、魚類などの基本的なタンパク源のさらなる供給拡大が必要です。

そのような中で、注目されているソリューションの一つがティラピア養殖です。ティラピアは水質に対する適応性が強く、繁殖力があり、病気の発生が少ないため、非常に飼育しやすい淡水魚として知られています。そのため貴重なタンパク源として高く評価されており、中国、東南アジア、北アフリカなどで既に積極的に展開されています。

東アフリカにおける水産業の現状分析

もともと、東アフリカではビクトリア湖を中心に漁獲がなされてきました。ケニアの水産業は国内漁獲高が11.5万トン、輸入が1.96万トンで計13.5万トンあります(参考までに、日本は2022年時点で385万トンの漁獲高があります、農林水産省のデータによる)。

報道によると、需要は約50万トン程度と見込まれており、大きな需給ギャップが存在しています。供給の87%が漁獲によるもので、そのうち83%が内水域での漁獲です。ビクトリア湖は内水域の70%を占めており、ケニアにおける水産業の中心地であることが分かります。

一方、輸入のうち80%は中国からのものであり、その大部分がティラピアです。

実は、ビクトリア湖の漁獲高は減少傾向にあります。かつては10万トン以上で推移していましたが、近年は8~9万トン程度。その原因は湖水の汚染と言われています。サステナブルな水産業の実現のために、ケニア政府はブルーエコノミーの開発を政策に掲げて、法整備等を進めています。

ケニアのリーディングカンパニー Victory Farms

アジアでティラピア養殖が一大産業であるように、アフリカもその後を追いかけているようです。

ケニアにおけるティラピア養殖のリーディングカンパニーであるVictory Farms社を紹介します。

ケニア国内ではビクトリア湖の湖畔の街、Homa Bay周辺で事業を展開しています。養殖だけでなく飼料の製造も展開しています。

同社によると、ケニアにおいてティラピラは最も重量当たりの単価が安価なタンパク源です。同社の流通ネットワークを通じて、ティラピラが安定供給されるようになった農村部の村では、一人当たりのティラピラ消費量が4倍になったというデータがあるとのことです。

同社は非常に野心的な成長戦略を描き、ケニアとルワンダでの事業拡大を目指し、資金調達に積極的です。スタートアップの資金調達市場が冷え込む中、同社はシリーズBラウンドで$35Mの資金調達に成功しました。今後は、東アフリカでトップ企業としての地位を確立するため、タンザニアやエチオピアなどの周辺国でも事業展開を行う予定です。

また、ウガンダにもYaleloという同規模の企業が存在します(ザンビアでも展開しています)。両社を含む数社が切磋琢磨し、東アフリカでのティラピア養殖市場が拡大し、一大産業へと成長する未来が楽しみです。

ウガンダのYalelo社
Yalelo Uganda – Uganda’s #1 Fish

筆者:AAIC エジプト法人取締役、ケニア法人マネージャー 星野千秋

 

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