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日本はドローン後進国?!「世界で広がるドローンビジネス最前線」

2019年9月、サウジアラビアの石油施設がドローンによる攻撃を受け、大きな被害が出たニュースについて記憶に残っている方も多いのではないでしょうか? これまで何十億ドルもの予算をつぎ込み、アメリカの防空システムを導入していたにもかかわらず、1台数十万円程度のドローンがその最新防空システムを突破したというニュースは衝撃でした。

日本では、家電量販店や専門ショップなどで気軽にドローンの購入が出来るようになり、かなり身近な存在になりつつあります(※)。

しかし、冒頭のサウジアラムコの事件のように、良くも悪くもドローンの利用用途は広く(ほとんどの場合はよい例です!)、世界では様々なビジネスの中でのドローン利用が広がり始めています。「ドローン後進国」と言われている日本ですが、本記事では世界におけるドローンの活用例を広くご紹介したいと思います。

(※)2015年に首相官邸にドローンが落下した事件をきっかけに都内でのドローン飛行が規制され、自由に飛ばすことが難しくなりました。ドローンを飛ばす前に必ず規制を確認するようにしてください。

ドローンによる医療製品の配送を行うユニコーン企業 「Zipline」

アフリカには5つほどのユニコーン(2019年時点)企業が存在しますが、その1社がZiplineというドローン企業です。ドローンで何をしているかというと、血清や医薬品を配送しています。Ziplineの最初の活動拠点であるルワンダは、「千の丘の国」と称されるほど起伏の激しい国であるうえに、医療インフラが未成熟なため、血清や医薬品の配送に大きな課題を抱えていました。一方、米国では日本と同様に自由に(商用)ドローンを飛行することが難しい。そこに目を付けたのがZiplineで、本社のある米国ではなく、大きな社会課題を抱え、ドローン規制のないルワンダで、政府の協力の基で血清や医薬品配送の実証実験を開始しました。

比翼型のドローン(自立飛行型)を用い、時速100kmで配送、30分以内に患者のもとに到着し、パラシュートで医薬品を届ける。天候に関係なく利用可能で1.8kgまでの製品(血清3つ分)を1度に配送可能なZiplineのドローンは見事にルワンダの課題を解決しました。今ではルワンダで2か所、ガーナで4か所の「ドローン空港」を保有し、1つの空港で直径160kmの範囲をカバー。ルワンダでは、2つの空港でほぼ全土をカバーし、国内の約60-70%程度の血清をZiplineが配送するまでに成長しています。

さらに、新型コロナの影響で医療物流に支障が生じていた米国では、米連邦航空局(FAA)がNovant Health(NC州)に対してドローン物流を認可し、ルワンダでの実証実験の結果が評価され、Ziplineが数十kmにも及ぶ長い距離をドローンで飛行し、荷物を運搬する初の企業となりました。

図1 Ziplineの比翼型ドローンによる血清配送

(動画はこちら

(出所:Ziplineホームページ)

ドローンと機械学習で、農業のリスク回避と効率化を図る企業「Aerobotics」
次に紹介するAeroboticsも活動拠点をアフリカに置きます。近年、中国の旺盛な需要により、マカデミアナッツが密かなブームになりつつありますが(弊社の投資先でも栽培しています)、需要に応えるように農園を拡大させるものの、何百haにもおよぶ広大な農園の木々の中から病害を見つけることは大変な労力です。そこで登場したのがドローン×カメラ×機械学習ソリューションです。

Aeroboticsは、ドローンおよび衛星から取得した航空写真に対して、自社開発の機械学習アルゴリズムを適用して、広大な土地から早期に農作物の異常を発見、警告する仕組みを提供しています。また、病気が顕在化する前の農作物についても、潜在的リスクを農家に知らせることで、農作業の最適化を支援しています。導入した農家からの高い評価の口コミが広がり、2018年時点で南アフリカのマカデミアナッツ市場の40%の農家と、柑橘類市場の20%を占める農家から利用されるまでに成長しています。

図2 Aeroboticsによる農作物の病害検知

(出所:Aerobotics blog記事)

ドローン空撮データの分析・加工用ソフトウェアを開発 「Pix4D」
先進国でもドローンの活用は進んでいます。Pix4Dはドローン空撮データの分析・加工用ソフトウェアを開発するスイス企業で、3D画像作成技術から始まり、建築や農業における画像分析・測量など、幅広い適用分野での技術開発を行っているリーディング企業です。

例えば、これまで火力発電所において必要になるストックパイル(貯炭)の監査は、人力で行うため非効率であるうえに、立ち入りによる健康へのリスクも課題とされてきました。そこで、世界で初めてPix4Dは自社のPix4Dmapperによるドローン測量で、正確かつ効率化された監査を実現しました(空撮写真の分析により99%精度の石炭測量に成功、さらに85%の時間作業時間短縮と無人化による健康リスクの排除にも成功)(※)。このほかにも、パイナップル農場での農作物の状態把握や、災害後の空撮写真撮影など、幅広い分野で活用されています。

(※)RWE(エネルギー会社)、QuestUAV(ドローン機体開発会社)、PwC UK(棚卸監査に立ち会う監査法人)の事例

図3 Pix4Dが提供するソリューション例

(出所:Pix4Dホームページより、AAIC作成)

現場業務を3Dデータで管理し効率化を支援 「3D Robotics」

当初、DJI、Parrotと並びドローン三強メーカーとしてその名を馳せた3D Robotics(3DR)ですが、今はクラウド型ソフトウェアサービスに注力して、復活しつつあります。3DRが提供するSiteScanは、ドローンの撮影データをクラウドで処理し、短時間で三次元モデルを構築するというソリューションです。国交省「i-Construction」にも対応しており、土木測量の専門的な知識がなくても、ドローンによる空撮から3Dデータ作成、保管、管理までをすべて自動で実行可能です。作成された3Dデータは、地図作製、造成計画、実施設計、工事進捗管理などの工程で活用可能で、現場作業や管理作業の大幅な生産性向上に役立っています。このほか、橋梁建替工事時の橋梁の空撮からデジタル化や点群データの生成などでも活用されています(※)。

※アメリカアリゾナ州の橋梁建替工事など

図4 3DR Site Scanによる測量イメージ

(出所:3DRホームページ)

ドローン防衛機器の開発と販売を手掛ける 「DroneShield」

最後に紹介するのは、ドローン防衛技術・機器の開発、販売を手掛けるDroneShieldです。冒頭のサウジアラムコのドローン攻撃に代表されるドローンの悪用に対抗するための企業も現れています。2019年にはオーストラリア国防軍から着用可能ドローン検知装置を受注するなど、大型取引を拡大させており、ドローン防衛業界の主要企業の一つとなりつつあります。この他にも、ボストンマラソンにてドローン検知機とドローンガン(ドローン飛行阻止装置)を独占共有し、大会の安全な運営に貢献するなど、民間のイベント運営の中での利用も始まっています。

図5 DroneShieldが提供するソリューション例

(出所:DroneShieldホームページより、AAIC作成)

ドローンは儲かるのか?

これまで様々な企業のドローンビジネスを紹介してきました。ドローンと一言で言っても、その中にはドローンなどのハードを提供する企業もいれば、機械学習やクラウドと組み合わせたサービスを提供する企業、さらにはメンテナンスを提供する企業がいました。ドローンでビジネスをやる場合、何が儲かるのでしょうか?

様々な意見があるかと思いますが、BCG(Boston Consulting Group)は、「ドローン産業はPC産業と同じようにハードがコモディティー化して、ソリューション分野が付加価値を生むビジネスに変遷していく」と分析しています。実際に、民生用ドローン(ハード)市場は中国DJIが席巻しており、10年前と比べるとドローンの価格は大きく下がっています。

今回の企業事例では省きましたが、日本企業としてはテラドローン社が世界中で活躍しています。彼らは今後付加価値を生むとされるソリューション分野(例えば、測量や点検分野やそこでのオペレーション)に注力し、世界中のドローン(テクノロジー/サービス)企業への出資や買収を繰り返し、事業を拡大しています。建設・土木現場でのドローン活用はこれから普及を始めるタイミングなので、国内外問わず、日本企業もまだまだ収益を上げる可能性がある領域だと考えています。

図6 ドローンビジネスのバリューチェーン

(出所:BCG bcg.perspectives “Drones Go To Work”, 2017)

トップ画像出所:Medium記事 ” The Importance and Future of Drone in Cargo Transportation”

文章:AAIC Japan 難波昇平

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