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アフリカのAmazonはWeWorkに?アフリカで初めてユニコーン企業となったJumiaの現在地

2019年のアフリカビジネスニュースで大きな話題となった会社
2020年も1ヶ月を過ぎようとしていますが、いかがお過ごしでしょうか。昨年、2019年のアフリカビジネスシーンを振り返ると、8月に開催されたTICAD VIIもあり、大変盛りあがりました。多くの会社が話題にあがりましたが、今日はその中でも激動の1年を送った、アフリカのAmazonと呼ばれるJumia Technologies(以下Jumia)についてお話できればと思います。

「アフリカのAmazon」はユニコーンに

Jumiaは2012年にフランス出身の元マッキンゼーのJeremy Hodara と Sacha Poignonnecが創業した会社です。ナイジェリアでのEコマースの事業を同年に開始しました。その後、先進国で成功したビジネスモデルを徹底的に模倣し新興国で広げることで有名なドイツのロケットインターネットのサポートを受け、他のアフリカの国へと事業の拡大を進めました。また、地理的な事業の拡大だけでなく、Eコマースに加えて、フードデリバリーサービスのJumia food、旅行代理店のJumia Travel、不動産エージェントのJumia Houseなど数々のオンラインをベースにしたサービスも拡大してきました。事業の拡大とともに資金調達を実施し、創業から4年の2016年のシリーズCの調達で、ついにアフリカで初めてのユニコーン企業(時価総額10億米ドルを超える企業)となりました。

アフリカのテックカンパニーとして初めてニューヨーク証券取引所に上場
ここ数年、アフリカの投資家界隈では、「Jumiaはいつ上場するんだ」と話題になっていましたが、ついに2019年4月12日にニューヨーク証券取引所に上場します。”アフリカ発のテクノロジーカンパニーとしては初めてのニューヨーク証券取引所での上場”ということで大きな注目を集めました。公募価格は14.5米ドルでしたが、4月17日に最高で49.77米ドルを記録し、企業価値は30億米ドルを超えました。上場時の目論見書に記載されている直近の決算書では年間150百万米ドルの売上の一方で営業利益で194百万米ドルの赤字、これだけ損失を出しているにも関わらず予想以上の株価がついたのは、世界の投資家がアフリカのEコマース市場の今後の成長を高く評価しているという証明となりました。我々のヘルスケアファンド事業の投資先候補との会話の中でもJumiaの上場は大きな話題となりました。産業は違えど、アフリカのスタートアップの先行例として、「Jumiaの次は俺たちだ」と多くのアフリカの起業家に夢と希望を与える出来事となりました。

上場後失速

順風満帆に見えたJumiaですが、上場の翌月5月にスキャンダルが出ます。アメリカ人のアクティビスト、Andrew LeftのCitron Researchにて「Jumiaが上場申請時に提出した数字に齟齬がある」という主旨のレポートが出されました。レポートが出された後の1週間で50%近く株価を下げました。(5月の末で株価は26.62米ドル)
6月以降もIRで投資家に対して好材料を出せず、2019年12月末時点では株価は6.73米ドルとなり、時価総額も10億ドルを割ってしまい、もはやユニコーン企業ですらないという状況です。事業もアフリカ14カ国でEコマース事業を展開していましたが、11月、12月でカメルーン、タンザニア、ルワンダの事業の撤退をしました。IR上では、「選択と集中」という説明をしていますが、爆発的な成長に陰りが見えているのは確かです。

WeWorkと似ている?

Jumiaのこれらの動きを見ると、昨年、世界中で大きな話題となったWeWorkの問題と本質的には類似しています。”テック”という言葉に投資家が翻弄され、本質的な事業の価値、競争力の源泉を見過ごし、いたずらに株価・企業価値だけが釣りあがっていく。Jumiaの場合は「テック」という言葉だけでなく、「アフリカ」というキーワードも輪をかけて企業価値を算定する上での不透明な要素となっています。
私はルワンダで2年間生活したことがあり、頻繁にJumiaのサービスを使っていました。確かにJumiaのサービスがあることで、我々消費者側は価格の透明性や購入できる商品の数は増えました。またアフリカの多くの都市で発生している慢性的な渋滞に耐えることなく、商品を購入できるようになりました。しかし、「アフリカのAmazon」と言われるJumiaですが、時間を指定しても、時間通りに商品が届かなかったり、購入した商品が在庫切れだったりと、日本のAmazonでの購入(ダンボールを開ける瞬間にワクワクするあの経験)に比べるとまだまだです。これらのUX・UIを決めているのは配達を行うドライバーも含めた、オペレーション体制であり、決して「テクノロジー」ではありません。

正念場をむかえるJumia

まさに真価が問われているJumiaですが、課題はあるものの、今後爆発的な成長が見込まれるアフリカ消費市場において、最大規模のEコマースプラットフォームを構築していることは間違いありません。ここにどのような価値を積み上げていくのか、世界の投資家は目を光らせています。また上述したとおり、Jumiaは現在アフリカ各国で同時多発的に生まれているスタートアップ企業のトップランナーでもあります。彼らの株式市場での評価が、「アフリカスタートアップ」、ひいては「アフリカ市場」の評価にもなり得ます。数年後、”GAFA”のように、アフリカにおける人々の生活、歴史を変える巨大企業となるのか、WeWorkのように「砂上の楼閣」と言われるのか、正念場を迎えるJumiaから2020年も目が離せません。

なお、アフリカ進出を応援するプラットフォーム「ANZA」でもアフリカに関するビジネスニュースを配信していますので、ぜひご覧ください。

文章:AAIC (ラゴス) 一宮

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