アフリカで広がる調理時の健康被害
皆さんが調理に使う熱源といえば、なんでしょうか?日本ではガスか電気が一般的だと思います。そして、欧米など多くの先進諸国でも同様の状況でしょう。さて、アフリカの調理燃料はどのような状況なのでしょうか。実はサブサハラ(サハラ砂漠以南のアフリカ諸国)の多くの国では、マジョリティである低所得者層を中心に、木材や木炭とった固形燃料使用者が圧倒的に多いです(ケニアでは一日$7.5以下で暮らす家庭が78%を占めます。2018年、Economist参照)。その割合はサブサハラ43か国平均で約8割にも及びます(2014年、Global Alliance for Clean Cookstove参照)。これらの燃料を使用した際に発生する大量の煙による健康被害は大変深刻な問題です。ケニアでは調理時の健康被害により年間数万人が亡くなっていると言われています。各国政府としては、いかにしてクリーンな調理環境を浸透させるかが喫緊の課題となっているのです。
LPGの普及
この課題解決に向けて、アフリカ各国でトレンドとなっているのがLPGの使用です。都市ガス(パイプライン)は一部の都市を除いて整備されていないので、シリンダー式のLPGを使用します。近年ケニアにおいて、LPGシリンダーは多くのガソリンスタンドや小さな道端ショップ(キオスク)で販売されており、都市部だけでなく地方でも容易に手に入るようになってきています。一番小さいかつ最も一般的な6kgのシリンダーは約1000円で購入することができ、2018年に価格が急騰した木炭に比べて割安に使用することができます。また、ガスコンロ自体も中国などから輸入されているテーブルコンロが2000円程度で購入でき、現地の人でも手の届く範囲です。なお、所謂中間層以上には主にフリースタンディングホブやビルトインホブなどの調理器具が普及しており、先進諸国と変わりません。また、このトレンドに乗じて、スマートメーターを使用したLPGシリンダーも普及しています。ケニアではPayGoEnergy社、タンザニアではKopa Gas社など。払った分だけガスを使用できるPay as you goモデルでLPGシリンダーの流通に取り組んでいます。
ガス販売店の様子
青空マーケットで販売されているテーブルコンロ
群雄割拠のケニアのクリーンコンロ市場
しかしながら、まだまだLPGはどの地域でも手に入る訳ではないのが現状であるため、その他の熱源を使用した調理器具の普及を目指している企業も見受けられます。ケニアでこの課題解決に取り組む企業を3社ご紹介します。
まずはBurn Manufacturing社。カナダ出身のPeter Scott氏が2011年に立ち上げたBurn社はケニアで木炭コンロの製造・販売を展開しています。主力商品Jikokoaは改良型木炭コンロとして、従来の木炭コンロ使用者の買い替え需要や、ガスコンロユーザーの代替需要(ガスがなくなり、すぐに購入できないときなど。)を取り込んで普及しています。結果、4,000円程度のJikokoaをケニア国内で月間約1万台販売しています。国全体としてガスがトレンドであり2000円程度でガスコンロが買える中、この数を売るのは驚異的です。
次に紹介するのはkoko社。インド発のエタノールコンロメーカーです。2口のエタノールコンロとエタノールを入れるポリタンクを4500kshで販売しています。ケニアではエタノールの流通は安定してませんが、koko社の面白いところは、フランチャイズ式にKokoショップを各地に立ち上げ、エタノール版自動販売機をショップに置き、気軽にエタノールにアクセスできるようにしたことです。今年に入り勢力を拡大している印象ですが、今後の動向に注目です。
最後に取り上げるのは日本のトヨトミ社。日本では大手灯油ストーブメーカーとして知られています。トヨトミ社はケニアにおいて灯油コンロで勝負。ケニアでは中国やインド製の灯油コンロが1000円程度で手に入りますが、煙が多くすぐに壊れるためユーザーの満足度は決して高くありません。そんな中、灯油は田舎を中心にガス同等あるいはそれ以上に流通しており、そこに目を付けた同社はクリーン灯油コンロという新しいコンセプトを打ち出し、販路拡大を目指しています。当初は完全日本生産だったため価格が合わず苦戦していましたが、競合でもあったBurn社と開発・生産面における提携を発表しており、今後安価なクリーン灯油コンロでケニア市場に挑んでいくようです。
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トップ画像出所:ENVIROFIT(https://envirofit.org/clean-cooking-lpg-cookstoves-adoption/ )
文章:AAIC 星野
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