アフリカヘルスケアファンドがKobo360に出資
2019年8月、AAICはGPを務めるアフリカヘルスケアファンドを通じて、ナイジェリアの物流スタートアップKobo360への出資いたしました。Kobo360は最近のアフリカビジネスの潮流のど真ん中をいく象徴的な会社です。先月末のTICADで併催された日本・アフリカビジネスフォーラムでも同社の創業者/CEOのObi Ozorが登壇し、改めて日本でも注目を集めました。
同社の事業モデルを見ていくことで、今後のアフリカビジネスの動きを垣間見ることができます。
アフリカ市場をdisruptするプラットフォームビジネス
Kobo360のビジネスモデルは非常にシンプルです。トラック版のUberとも呼ばれています。10,000台を超えるトラックドライバー（多くは個人事業主もしくは小さな物流会社）と中長距離間の輸送を必要とするDangote、Olam、Unileverなどの企業をマッチさせるプラットフォームを提供しています。2017年末にスタートしたこのモデルは2年弱ですでに2千億円以上の規模の商品を配送しています。
プラットフォーム型のビジネスモデルはアフリカの市場において爆発的な成長をもたらす可能性を秘めています。アフリカはインフラが未整備なところが多くいわゆる「リープフロッグ(leap frog)」の起きやすい環境と言われています。このような既得権益を持つ大きなプレーヤーのいない真空状態のアフリカ市場において、関わる全ての人に”Win”をもたらすプラットフォームを構築するスタートアップが信じられないスピードで成長しています。
Kobo360のケースを見ていくと、全ての人に”Win”をもたらしていることがわかります。加入したドライバーは加入前と比較して40％程度注文が増加しています。また彼らはKobo careという特別プログラムを使うことができ、特別価格で保険、トラックの車両の整備、ガソリンなどが受けることができます。一方、配送を必要とする企業側にとっては、複数の物流会社（ないし仲介会社）に注文をする手間がなくなり、さらに運送費自体も仲介業者を省けるので、既存の物流会社と比較して30％弱安くなります。また、マクロ的な視点で見ると、このプラットフォームの出現によって、事故や危険運転、賄賂なども低減し、質の高い物流で経済自体も活性化していき、政府や社会全体にもメリットをもたらしています。
何もない環境で、デジタル化されたプラットフォームがすべての人の生活と社会を一変させる、スタートアップの用語で”Disruption”と言われますが、アフリカ市場でそのお手本を示したのがKobo360です。抵抗勢力がなく、全ての人が「応援したい」、「参加したい」という状態を作ることで爆発的な成長が実現できるのです。
世界の投資家が注目するアフリカスタートアップ
上記したKobo360の「応援」の輪は世界レベルに広がり、誰もが知っているグローバルプレーヤーが出資参画しています。2018年末のシードラウンドではIFC(世界銀行グループ)が、今回我々も出資した今年8月のシリーズAラウンド（合計30百万米ドルを調達）では、IFCを含めた既存株主の追加出資に加えて、リードインベスターとしてGoldman Sachsが出資を決めました。BRICs市場でも最近見かけることのなくなってきた、驚異的な成長と社会的なインパクトに多くのグローバルプレーヤーが注目をしています。今後アフリカでは、Kobo360が取り扱う物流だけでなく、多くの産業でdisruptionを起こすスタートアップが出現すると言われています。今年の4月には「アフリカのAmazon」と呼ばれるJumiaがアフリカ発のテクノロジー会社として初めてニューヨーク証券取引所に上場したことで大きな話題となりました。地球最後のラストフロンティアでDisruptionを起こすスタートアップに世界の投資家が目を光らせています。
Kobo360の今後
直近のシリーズAの資金調達を終えて、今後Kobo360はアフリカ10か国以上に事業を展開していくと宣言しています。また上記した”Kobo Care”のように、プラットフォームのネットワークを使って新たな商流を築くことも今後の展開として考えられます。我々アフリカヘルスケアファンドとしても、日本企業とのネットワークを駆使してバリューアップに貢献していきたいと考えています。アフリカスタートアップビジネスのフロントランナーと言える同社の今後の動きに世界が注目しています。
なお、アフリカ進出を応援するプラットフォーム「ANZA」でもアフリカに関するビジネスニュースを配信していますので、ぜひご覧ください。
写真出所：IFC (International Finance Corporation)
文章：AAIC 一宮
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