AAIC|Asia Africa Investment & Consulting

アフリカでの日本のプレゼンスとグローバル人材育成の要件

 2021年、外務省による日本の海外在留邦人数は135万人。長期滞在者が81万人、永住者が54万人である。日本の人口全体1.26億人の約1.1%に相当する

 韓国では400~600万人が海外で生活しているといわれており、人口の15%相当である。欧州も同様で、オランダ、アイルランド、北欧などでは、職を求め国外に居住することは当たり前となっている。欧州や米国で働くことは一般的で、ドバイやアフリカ、アジアでも多くの人が働いている。

縮退する日本と、その処方箋

 今後、日本市場は大きく縮退する。2021年、コロナ禍の出生数は過去最低の約84万人。死亡者数が約145万人。差し引き61万人減少した。しかも、今後はこれが拡大していく。団塊の世代のピークは1949年生まれの約270万人。今後、出産可能な人口はますます減少してく。国の人口予測でも、毎年80万~100万人減少する時代が40年以上続くとされている。

 毎年100万人減は衝撃だ。毎年、中堅の県が1つずつ消えていくことになる。今年は和歌山県、次は福井県、香川県、徳島県と。いずれの県も人口は100万に満たない。もちろん、県単位ごとに人口が消滅するわけではないが、その規模の人口が国全体で減少していく。

 さらに、高齢化が加速しながら減少するのだ。古今東西、このような急速な人口減少で栄えた国は存在しない。

このような状況において、日本はどうすればいいのか?

―― 答えは明解である。

個人は「世界の成長市場で戦える力を持つ」こと。
少なくとも、人口の1割程度、1200万人程度が成長する世界で活躍することが、今後の日本にとって必須であると考えている。

企業はさらに明解で「世界で勝つ!」これしかない。
国内で膨らみすぎた企業数を再編し、海外で勝ちにいくことだ。平成の30年間で株価が伸びた企業のほとんどは、海外で勝ち抜いた企業だ。
大企業はもちろん、ベンチャーや中小企業でも、グローバルで成功する上で必要な人材の確保・育成は必須である。海外事業ポートフォリオの見直し、DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーン革命)事業の推進、海外でのM&Aなど、やるべきことが無数にある。

最後に、国/自治体/地方の真の「開国」である。
国や地方自治体などは地域に縛られているため、直接、海外進出することはできないが、真の「開国」、つまりは「世界から人材・資金・企業・情報を呼び込む」ことだ。これは、イギリス、シンガポール、香港のほか、カナダ、オーストラリア、北欧等々、他国も積極的に行っている。世界では、当たり前の処方箋である。ここでもグローバル人材が不可欠である。

アフリカでの日本人のプレゼンス

 さて、次に我々が注力しているアフリカでの日本人のプレゼンスを、検証してみよう。

図1:アフリカでの主要国のプレゼンス


図はAAICに帰属

 図にあるように、コロナ前の2019年で外務省によるアフリカの在留邦人数は約7,500人。中国80~100万人、フランス25万人、イギリス17万人、ドイツ13万人、韓国1.8万人と他国と比較しても、限りなく劣位である。

 東アフリカなどでは車の8割近くが日本の中古車。日本製品のブランド認知は高いが、日本人のプレゼンスは極めて限定的である。道を歩いていると最初は「ニーハオ」と声をかけられ、「NO!」というと「アニョハセヨ」と返事があった。

 こうした状況ではあるが、現地で頑張っている日本人は多数おり、その何人かをご紹介したいと思う。一番目は、手前みそではあるが、ルワンダのルワンダナッツカンパニー(RNUTS社)で活躍している3組の日本人ファミリーである。

 このルワンダナッツカンパニーは、2013年にケニアナッツカンパニーで大成功された佐藤芳之さんらと一緒に立ち上げた事業である。

 アフリカでの人材を募集したところ、「アフリカで事業をやりたい!」と、飛び込んで来てくれたCEOの原田さんは、元リクルート出身。学生時代にアフリカに旅行し、いずれはアフリカで事業をしたいと志を持っていた。COOの飯田さんは、元三井物産出身。現地での工場建設など大活躍している。CFOは、日本の公認会計士の資格を持つ笠井さん。奥様がアフリカ好きで、夫婦共にアフリカでバリバリとビジネスをやっている。


左上 COO 飯田さん、CFO 笠井さん、笠井さんの奥様、椿
左下 飯田さんの奥様、CEO 原田さん、原田さんの旦那様(写真はAAICに帰属)

 3家族とも、夫婦・子供連れでルワンダのキガリで生活し、現地スタッフ300名と共に200haのマカダミアナッツ農園と加工工場を運営している。

 原田さんの活躍はアフリカでのグローバル女性活躍例として今年5月にフォーブス・アフリカ(Forbes Africa)にも取り上げられた。

もう一名ルワンダで活躍している日本人を紹介したい。昨年、2021年にルワンダでタイ料理屋をひらくを出版した、唐戸千沙さんだ。

唐戸さんも元リクルート出身で、原田さんの後輩に当る。所謂、シングルマザーで原田さんに相談をし、アフリカで5歳の子供をつれて単身でタイ料理屋を開く決意をした。

 詳しくは本や東洋経済新聞社で行なった対談「コロナ禍収束後に行きたい「アフリカの歩き方」椿進×唐渡千紗「いるだけで元気がもらえる!」にあるので、ぜひ読んで頂きたいが、そこでの獅子奮迅の活躍は素晴らしものだ。

 リクルートのOBは、日本でも多く活躍しているが、海外でも成功しているケースも多いと感じている。

 それは、リクルートで鍛えられたDNAが、海外でもそのまま通用する。お客様のニーズをみつける、目標を立てる、そこへのプロセスを明確にする、「売る」という活動を徹底する、PDCAをしっかり回す、ビジョン/パーパスを大事にする、人を育てる、などなど、これらの事業の本質はグローバル共通である。

 このように、グローバル人材の育成は、語学だけではなく、ビジネスの本質をしっかり体現できるのかにある。

 最後に、もう1名ご紹介したい。エチオピアで高級バックのブランドを立ち上げられた、鮫島弘子さんである。

 鮫島さんは、もともとデザイナーで、海外青年協力隊員としてエチオピアに赴任した際に、エチオピアシープという素晴らしい皮の素材に出会った。その後、起業し現地に工場を作り、単身で乗り込んで現地の職人を育成し、「andu amet(アンドゥアメット)」というブランドを創業した。日本のテレビ等でも取り上げられ、人気を博している。

 

このように、一人一人の思い・信念によって、物事は始まっている。

 このように、ミクロ的には日本の若者が新興国で活躍している事例は多数生まれてきている。最後に、経営者・人事担当者の視点で、グローバル人材の育成に必要な3要点をお伝えしたい。

グローバル人材の育成に必要な3要点

「エントリーマネジメント」

 最初から海外・新興国に行きたいという人を募集し、派遣すること。現在、一定の割合の若者は「このまま日本に留まったままではやばい」と気が付いている。まだ少数ではあるがこうした危機意識を持った若者を最初から採用することが肝心だ。日本に来ている海外留学生や海外ローカルスタッフの本社採用も可能性が大きい。日本語はその後数年で身につけてもらえばいい。

「エースを海外事業に投入すること」

 次期社長候補、同族のJr、だれもが認めるエース、社長自身を外に投入すること。ユニ・チャームなどもそうだが、創業者のご子息が、海外事業を担当し、実績をあげ、大経営者になった事例は沢山ある。中国・インドネシアで成功したチームで、アフリカを開拓している事例も出てきている。「20年前の中国と一緒だ!」「10年前のインドネシアと同じ匂いがする!」という声もよく聞きます。

「海外で成功した人を、人事で報いること」

  同期トップで課長にする、部長にする、役員にする、社長にすること。これが、サラリーマン社会ではもっともインパクトのあるメッセージになる。口でいくら言っても響かない。人事一発で浸透する。

 日本企業のグローバル化は待ったなしである。大人口減少時代を迎える日本で、日本にしがみついていたら企業の将来はない。世界で活躍できるグローバル人材の育成は急務である。――みなさまの、ご活躍とご奮闘を心より期待しております!

文章:AAIC 代表パートナー/ファウンダー 椿 進

(この文章は、月刊 先端教育2022年6号に、椿が寄稿したものを編集いたしました)

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