東南アジアのデジタルジャイアントの動きが活発化しています。
CB Insightsによると2021年1月26日時点で東南アジアのユニコーン企業は9社あります(インドネシア:5社、シンガポール:3社、フィリピン:1社)。その中でもとくに有名な、ライドシェアからスーパーアプリ化したGrabやGojek、EC大手のTokopediaやBukalapakなどのユニコーンが、外部環境の変化や今後の成長を見据えて新たな動きを取り始めています。
図1 東南アジアのユニコーン企業
ライドシェア二大巨頭のサービス統合の可能性
背景は異なるものの、かつて中国のライドシェア企業である滴滴打車と快的打車の業界二強が合併し、滴滴出行が生まれ、ウーバーの中国業務を買収して支配的地位を確立したように(*1)、東南アジアではGrabとGojekの二大巨頭が同じ動きをするのではないかと言われてきました。
新型コロナの影響で両社の評価はセカンダリー市場で大幅に下落している模様で(例えば、Grabは2019年に比べて25%のディスカウントで取引がされているとの報道、*2)、2020年上期はGrab の株主であるソフトバンクとそのビジョンファンドが合併に反対し、一度はとん挫仕掛かった話も、2020年秋頃から合併協議再開のニュースをメディアで目にする機会が増えました。
一方で、インドネシア発のGojekはもちろん、シンガポール発のGrabにとってもインドネシアは最大市場であり、両企業にとってインドネシア市場の戦略の相違は合併時の障壁となる可能性があります。Gojekは政府の支援もあり、両社が合併した場合、Grabがインドネシアでは有利な形での合併が難しいのではないかという憶測もあり、Grabの一部幹部は合併に反対しているとも言われています(*2)
Grabの新たな動き
このような状況の中、Grabはいくつかの新しい動きを見せています。
1つは年内の米国上場の可能性です。これにより20億米ドル以上の資金調達が可能と報じられています(*3)。もう1つは、シンガポール国内の他業界大手との協業の動きです。
シンガポールでは2020年末、デジタルプレイヤーへDigital Full Bank License(DFB)とDigital Wholesale Bank License (DWB)と呼ばれる新たなBank Licenseの発行を決定しました。DFBは、既存のDBSやOCBCのような銀行と同様のリテール向け銀行サービスをデジタル(オンライン)に限った形で認めるライセンスです。このライセンスをシンガポール最大手の通信キャリアSingtelと手を組み、Grabが取得しました(図2)。
図2 シンガポールのデジタルバンキングライセンスの勝者
さらに、GrabはシンガポールでPPIHグループ(ドン・キホーテ)との提携を発表しました。シンガポールのドン・キホーテ(Don Don Donki)はコロナ禍でも店舗拡大を続け、増収を実現している元気のある企業ですが、EC化を加速させるため、Sea Ltd.が展開するShopeeと、その足回りを担当するGrabと手を組んだ形となります(図3)。
図3 Don Don DonkiとGrabおよびShopeeの提携スキーム
Gojekの新たな動き
一方で、Gojekも新たな動きを見せています。インドネシアの大手ECサイトTokopediaの買収を検討しており、真のスーパーアプリ化を目指している模様です(*4)。Tokopediaは、他国同様にECサイト1位の座をShopeeに受け渡し(こちらのAAIC note参照)、今後の成長戦略を考え直す必要に迫られています。両社はインドネシア発のスタートアップでユニコーンへと成長した企業であり、事業領域が被らないこともあり、合併によるインドネシアでの事業強化には大きな可能性を秘めていると考えられます。
出所
*1 36 KR Japan: https://36kr.jp/109856/
*2 Bridge: https://thebridge.jp/2020/09/grabGojek-resume-merger-talking-backed-masayoshi-son
*3 Bridge: https://thebridge.jp/category/section/grabGojek
*4 Bloomberg: https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-01-05/gojek-is-said-in-talks-with-tokopedia-for-18-billion-merger
トップ画像出所:Tech in Asia(https://www.techinasia.com/asia-top-20-startup-unicorns-infographic)
文章:AAIC Japan 難波昇平
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