12月に開催されました経済産業省、ケニア政府とジェトロ共同開催の「日アフリカ官民経済フォーラム」のパネルディスカッションに登壇させて頂きました、AAIC ケニア代表の石田です。
本フォーラムは3年に一度行われており、貿易・投資、インフラ、エネルギー等各分野において、日本とアフリカの民間企業の協力とアフリカにおける日本企業のビジネス活動の促進を目的としており、来年2022年に開催されるTICAD8の前哨戦とも言えるフォーラムで、当日はオンライン含め1,000名以上の参加者を記録したと聞いており、アフリカ経済に対する関心、注目度の高さが確認出来ました。
12月7日、Day1の分科会、Panel 1 ”Innovation in AFRICA with JAPAN” (セッションテーマ:COVID-19でも加速するアフリカビジネスのスタートアップ企業の可能性)でもアフリカ事業に注目したスタートアップについてお話しさせて頂きましたが、本レポートではその内容を図表と共に更に詳しく解説して参ります。
日アフリカ官民経済フォーラムでも「2021年はアフリカ事業に注力したスタートアップが既に4.5 billion USD(約5,000億円)を調達、これは昨年の調達金額の3倍以上(Briter Bridges調べ)」とお話しさせていただきましたが、その背景の1つとして大型案件(ユニコーン企業*の誕生)が挙げられます。
*ユニコーン企業とは評価額が10億USドル(US$1Billion)以上の企業を指す。
1USドル=日本円114円換算で1,140億円。
今年(2021年)はアフリカでユニコーン企業が誕生したというニュースを聞いた方も少なくないと思います。AAICが運営するファンドの投資先であるChipper Cashもその1社。ユニコーン企業の定義、それから「アフリカのスタートアップ」という定義でも見解が分かれるため(本社がアメリカにある場合は?など)、メディアによって数が若干異なりますが、概ね、以下の図表1の9社と言っていいと思います(上場企業を除くと7社)。
個別企業の概要は様々なメディアで取り上げられていますので今回は割愛しますが、2016年にEコマース(EC)のJumiaがアフリカ初のスタートアップとしてユニコーン企業になって以降、2019年、2020年と徐々にユニコーンが誕生し、2021年に一気に増えたことが分かります。
アフリカベンチャーキャピタル(VC)の立場としてはもちろんそう願っていますが、先ずはデータを見てみたいと思います。以下、図表2は2013年~2021年の世界のユニコーン企業数の推移で2021年12月現在、900社を超えています。
アメリカのユニコーン企業数(466社)が全体の50%を占め、それと比較するとアフリカや日本はまだまだユニコーン企業数が少ないので対数グラフ(倍々グラフ)で示さなければならないのが現状ではありますが、5−6年前と比較すると大きく状況が変わっているのが見て取れます。
また、昨今注目を浴びるインドとの比較では、アフリカのユニコーン企業数を9社とみると、4年前のインドの水準と並びます。そう考えると4年後のアフリカは・・・期待が膨らみますね!
以下は、2021年のアフリカスタートアップの資金調達金額(地域別)のグラフです。
今年はナイジェリア(Nigeria)の年でした。それに南アフリカ(South Africa)、エジプト(Egypt)、ケニア(Kenya)が続き、この4ヶ国を合わせてBig 4と呼ばれています。U.S.(Multicountry)がその次にありますが、これは先ほどのユニコーン企業のリストにもあったAndela、Chipper Cashのように資金調達のための親会社をアメリカに設置し、事業は主にアフリカで行っている事例です。Big 4とU.S.(Multicountry)で資金調達額全体の86%を占めます。
尚、ナイジェリアはフィンテックのOPayが1社で456億円(US$400Million、1USドル=114円換算)調達しています。今年は特に大型案件が目立ちましたので、金額ではなく件数で比較すると資金調達が行われた国がもう少し分散されます。投資家目線ではBig 4に続くガーナ、今後は仏語圏にも注目しています。
また、エジプトはアメリカの老舗VC、セコイア・キャピタル(Sequoia Capital)が初の北アフリカの案件として出資するなど、従来の中東の投資家にグローバルプレイヤーが加わってきました。エジプトからの進出は基本的にはMENA(Middle East and North Africa)ではあるものの、サブサハラアフリカへの進出事例も出てきています。また、逆にサブサハラからMENAへの進出も出てきました。
次にセクター別のグラフです。圧倒的にフィンテック (Financial Services)ですね。
この図表で注目したいのはヘルスケア(Health & Pharmaceuticals)、EC(E-Commerce & Retail)がそれぞれ2位、3位につけている点です。これは明らかにコロナの影響がありました。コロナ禍で世界各国でデジタル化が加速しましたが、アフリカも例外ではありません。ヘルスケアに関しては、ケニアでは医師の診察、検査(ラボ)、処方薬の受領まで、一切外出せずに完了するプラットフォームが既に存在し、またそれぞれの領域に特化したプレイヤーも複数います。今も「病院に行ってドクターに直接診てもらいたい」という人が少なくないのは事実ですが、行動に変化が生まれています。
ECも同様です。スーパー(カルフールなど)、ウォーターサーバーの水、食料品などほとんどのものがデリバリー可能となったと言っても過言ではありません。また、B2Bにおいても日用品、医薬品などの分野でマーケットプレイスを提供するスタートアップが誕生、またその周辺で配達、決済、在庫管理、認証などのサービスが生まれています。
来年もフィンテックの流れは続きそうですが、投資家の立場としては次のメインストリームになり得るセクターに注目しています。
海外在住の日本人にとって今年2021年は、2020年同様、日本に帰国しづらい一年でした。ケニアも現在、3日間の強制隔離の対象国です。
Twitterをみていると、隔離は各都道府県に送られ、宿泊先もホテルだけでなく、学生寮が使われていることもあるようです。家族4人(子供2人)で帰国し、もしも部屋が分かれて隔離されたらと考えると恐ろしいので、今年はケニアの国立公園で動物を眺めて過ごしたいと思います。観光はケニアの重要な産業の1つですが、厳しい時期が続いています。今年はアフリカへの出張を断念せざるを得なかった方もいらっしゃったと思いますが、来年も皆様の渡航をお待ちしています。
最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。どうか、良いお年をお迎えください。
文章:AAIC ケニア法人代表 石田
*サムネイル写真:JETRO提供