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【Waziwazi 活動報告②】 ケニア人アスリートの才能と日本との共創ロードマップ

こんにちは、AAIC の星野です。この記事では、AAICが協賛する Waziwazi の現在地とこれからを、ありのままにお伝えします。長文ですが、活動の熱量を感じ取っていただければ幸いです。過去の活動については以下の記事をご覧ください。

[過去の関連記事]
【活動報告】Waziwazi~ラグビー活動状況:ケニア人コーチの日本招聘プログラムについて(2024年6月実施)
アフリカにおけるスポーツのポテンシャルを解放するWazi Waziプロジェクト

 

1.Waziwazi とは?

まずは簡単におさらいを。 Waziwaziはラグビー元日本代表キャプテンの 廣瀬俊朗さん を中心に 2023 年に立ち上がった、アフリカと日本をつなぐ「日本流人材育成・交流プラットフォーム」です。現時点ではナイロビ(ケニア)を舞台にしたラグビーアカデミーが活動の中心ですが、将来的には他競技、さらにはビジネス人材育成へと領域を広げていく計画を持っています。AAIC は協賛企業として資金面・運営面の両方で参画しています。

2.ラグビーアカデミー 1 年目のリアル

2024 年 9 月、私たちはナイロビのDBA Rugby Academy とパートナーシップを結びました。実はこのアカデミー、既に毎週末 100 人以上の子どもたち(U15)が集まる人気プログラムだったのですが、その多くがキベラスラム出身で、靴も持っていない子が珍しくありません。そんな彼らに バスでの送迎、シューズの貸し出し、芝生のフルサイズピッチ、そして 練習後のランチ を提供しているのが DBA です。その志に共感し、Waziwazi として「もっと良いアカデミーにしよう」と手を取り合いました。

私たちが特に力を入れたのが、練習メニューの“日本流アップデート” です。ケニアの教育現場は良くも悪くも「先生の言うことは絶対」という権威主義的な雰囲気が色濃く残っています。ビジネスの現場でも上司が指示を出し、部下は「はい」と従うのが普通。昭和の日本っぽいですね。

そこで導入したのが、Chap Chap Interaction と名付けた仕組みです(Chap Chapはスワヒリ語で「速く、速く」の意味です)。練習を 5 分、10 分と細切れにし、その都度子どもたちを小グループに分けて「今やったことはうまくできた?できなかった?どうして?」を話し合わせます。その内容をコーチに報告し、コーチはさらに「Why?」を深掘りする。要は 対話と気づきのサイクル を高速で回すわけです。

正直、最初はうまくいきませんでした。コーチはすぐに「こうしろ、ああしろ」と指示を出し、子どもたちは黙ったまま。しかし、ここで工夫をしたのは、子ども達ではなくコーチに “なぜ自発性が大事なのか” を根気よく伝え続ける、ということでした。その結果、1年経った今ではコーチが質問役に徹し、それによって子どもが積極的に意見を出す場面が増えてきました。下を向いていた子が手を挙げて話す──そんな光景が少しずつ普通になりつつあります。このように、コーチの指導方法のカイゼンなども重ねることで、子ども達のトレーニングがより向上しています。

アカデミーで頭角を現した子の中には、奨学金を得て国内インターナショナルスクールに進学した例も出てきました。「ラグビーを通じて人生が変わる」瞬間を間近で見るたび、この活動の意義を実感します。

最後に、このアカデミーを支えるクラウドファンディングでご支援くださった皆さまに、改めて心より御礼申し上げます。芝生のグラウンドを走り回り、汗だくでタックルする子どもたちの笑顔は、まさに皆さまのお力添えの賜物です。

【写真1:必死に楕円球を追いかける子供たち。まだまだ靴が足りません】

【写真2:女子クラスにも多くの子どもたちが参加しています】
【写真3:昨年日本に招聘したPatrice(左)はアカデミーのコーチとして活躍するとともに、現地クラブの監督に就任しました。廣瀬氏(右)と一緒に】

3.2025年、日本の大学へ―留学プロジェクトの始動

「U15 で終わりではもったいない」。そんな思いから、私たちは U18(高校世代)、そしてその先まで一貫した育成ピラミッドを作ろうと動き始めました。その第一歩として、ケニアの有望選手 1 名が 2025 年 8 月に 日本の強豪大学ラグビー部の夏合宿 に参加することが決まりました。うまくいけば、来春に入学予定です。

彼のプレー動画を送ったところ、大学の監督は「即戦力になり得る!」と目を丸くしたほど。その一方で、文化の違い、語学、食事、そして日本独特の部活文化に適応できるか──課題は山積みです。それでも、彼が日本で羽ばたく姿は、後に続くケニアの若者にとって大きな希望になるはず。Waziwazi は全力でサポートします。

【写真4:彼がこの夏、日本の大学のトライアウトに挑戦します!】

4.2026 年、ケニアの高校ラグビーへ

次のステージは高校年代です。2026 年からは ケニアのAll Saints Embu High School と提携し、同校ラグビー部を「High Performance Centre(スポーツ強化指定校のイメージ)」へと引き上げます。ここではWaziwaziのアカデミーと異なり、毎日練習ができる環境が整っているため、私たちのメソッドをより深く実践できます。

その準備に向けてやるべきことは山ほどあります(タレントのスカウト、栄養管理、ウエイトルームの整備、日本語教育、さらには日本人コーチの派遣──等々)。

しかし、目標はシンプルです。それは…

DBA Waziwazi Academy → All Saints Embu → 日本(あるいは他国)の大学、というルートを確立し、「自分で考え、行動し、違いを楽しめる」プレーヤーを輩出すること

そして、そのようなプレーヤーを育てるために私たちが掲げる Player Mind‑Set は以下のとおりです。

違いを楽しむ / 過程を楽しむ / 成長を楽しむ / 皆とやることを楽しむ / まずはやってみる / 自分らしさを考える / 知らないことに興味を持つ / プレッシャーを受け入れる

この価値観がケニアに根づき、日本とケニアを行き来する人材が増えれば、スポーツの枠を超えた化学反応が起こると信じています。

【写真5:既にケニアの強豪校として名を馳せるAll Saints Embu】

【写真6:ここから世界で活躍する人材が生まれることを期待しています!】

5.将来のビジョン、スポーツからビジネスへ──人材育成の横展開

ラグビーで培った「日本流人材育成ノウハウ」を、ビジネス領域にも活用しようというのが、その先のチャレンジです。日本企業がアフリカ人材を受け入れる流れは確実に加速しており、既にアジアで構築されたルートがアフリカにも拡大するだろうと見込んでいます(参考:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB213970R20C25A6000000/

現在、ケニアでは WaziwaziとTVET(職業訓練校) の提携準備を進めています。単なる技能訓練や日本語教育に留まらず、スポーツで磨いた「自発性」と「多様性を楽しむマインドセット」を組み込んだプログラムを 2027 年に提供開始する計画です。

6.ご支援・ご協力のお願い

Waziwazi は、スポーツを起点に日本とアフリカをつなぎ、両地域に新しい風を吹き込むことを目指しています。現在も多くの仲間が関わってくれていますが、さらに大きなインパクトを生むためには、資金面・人的リソース・ネットワーク などあらゆる形のサポートが必要です。たとえば、アカデミーと高校には日本人コーチを常駐させる計画も進行中です。

「何か一緒にできそう」「詳しく話を聞いてみたい」と思われた方は、ぜひお気軽にご連絡ください。

ともに未来をつくる仲間として、皆さまのご参加を心からお待ちしています。

 

執筆:星野千秋(AAIC ケニア法人・エジプト法人 マネージャー)