AAIC|Asia Africa Investment & Consulting

「アフリカと中国の関係をあらためて考えてみたい その(3)アフリカの重機市場のリーディングカンパニー 中国企業「SANY(三一重工グループ)」とは?

AAICチャイナチームでは、「アフリカと中国の関係をあらためて考えること」を通じ、そこに我々日本企業がどのようにかかわっていくべきなのか?の示唆を獲得することを、近年の経営テーマの一つとして、深堀を続けています。初回のご報告(2024年1月掲載)では、アフリカと中国の関係について全体状況を俯瞰し、2回目(2024年8月掲載)ではアフリカNo.1の携帯企業「Transsion」についてご紹介いたしました。

今回、3回目として、開発が急速に進むアフリカのインフラ・鉱工業・発電領域において欠かすことのできない「重機」の中国No.1企業である「SANY(三一重工グループ)」のアフリカの事業展開を確認し、あらためて日本企業のアフリカ展開への示唆を獲得できればと考えています。

初回(2025年1月)でも言及していたSANY

初回調査時にも、中国の国家的戦略としてのアフリカへの投融資を背景に、インフラ・鉱工業・発電領域における中国企業のアフリカ進出は、過去20年、急速に拡大してきたことを確認しました。また、その中でも、最も恩恵を受けている企業として、重機の巨人である「SANY」は外せないピースであるのでは?と考えていました。

実際に、中国が国家的に関与し、実行まで担った投融資案件は非常に多く、また、それに伴い、中国からアフリカへの重機輸出は拡大してきました(※実は、アフリカ以外も多いのですが!)

そして、やはり、その主役企業がSANYであったと言えます。

SANYは、中国の小さな民営企業から出発し、コンクリート機械で世界首位、ショベルカーで中国首位となるまでに成長した重機企業です。売上約1.6兆円、純利益約1,200億円、グローバルに展開する上場企業(上海市場)です。近年の中国での不動産不況に伴い、実は中国国内市場では、苦戦しています。だからこそ、海外市場への展開を強化してきており、その中でも、まだ構成比は小さいのですが、高い伸びを見せているのがアフリカ市場向けです。

やはり叩き上げの経営者。強い経営理念

中国の国家的な発展、国内外でのインフラ投資、などの背景があれば、大きくなるに決まっているというシンプルな声もあります。しかし、同じことを試みた企業は、中国国内に多数存在していた中で、SANYが最も巨大な企業に成長したことは事実であり、その挑戦は、この梁氏という経営者だから成功してきた、とも言えそうです。古き日本の優良企業と類似した理念でもある「品質重視」・「自主開発」・「外資打破」などに拘ってきた姿が見て取れます。一方、単なる民営企業とも言えず、これも中国でよくみられる、公的機関との強いつながりも確認できます(兵器工業部出身、人民代表、党員など)

技術とブランドを積み上げてきた30年

2011年の東日本大震災の際に、SANYから、福島原発に寄贈されたコンクリート・ポンプ車をご記憶されている方もいらっしゃると思います。純粋な善意は真実だと思いますが、それによる副次的なブランド効果はなかなかの価値があると言えます。「世界初」・「世界一」・「寄贈」・「M&A」等、彼らは自社のブランドと技術を高めることを、非常に熱心に続けており、例えば、ドイツ企業へのM&Aも、コンクリート系の製品強化・ブランド強化には非常に大きな意味があったようです。

アフリカに進出して約四半世紀。累計売上4000億円超。単純な製品からはじまり、現在は多様な製品を投入

最初にアフリカに進出してから23年。現在では、アフリカ大陸を、北、西、東、中、南の5大エリアに分け、子会社15社、30ヶ国以上に拠点を設置、販売代理店30社以上、サービス拠点90か所以上を展開。スタートは、単純なポンプ車やローラーから始め、現在は多様な製品をアフリカ全土に販売、メンテナンスを行っています。2023年には南アフリカにアフリカ本部を設置しました。この地域展開戦略は、将来アフリカに展開したい日本企業にも、参考になると考えています。おそらく基本に忠実なアプローチであると推察しています。

アフリカ市場に適応した製品を投入。改善を続け、中国の公的活動にもしっかり乗っている

当然と言えば、当然なのですが、アフリカの気候、インフラ状況、エネルギー価格、など社会・経済環境に適応するように製品を改造し、アフリカのユーザーが使える製品を投入してきました。また、中国の国家的なアプローチも活用し、販路を広げてきました。これも、日本企業にとっては、参考になるアプローチだと言えます。

SANY製品は、アフリカのインフラ建設では欠かすことのできないものとなっている

SANY製品が使われたプロジェクトは、アフリカ各国の極めて象徴的・先進的なプロジェクトばかりであり、鉄道、道路、建築物、鉱山、発電所、港湾施設、ダムなど、あらゆるインフラ案件で活躍してきました。もちろん、資金は中国政府が、ゼネコンは中国企業が、という組み合わせの中で、競合他社を寄せ付けない強さを見せてきました。この視点では、日本企業が中国企業と戦うことは難しく、いかに彼らを補完していくか?という視点が必要だと思っています。

社会貢献や新しいビジネスにも積極的に取り組んでいる

長期的な視点で、結果として自社にプラスとなる社会貢献や人材育成、雇用創造に取り組みつつ、新たなビジネスにも参入しています。これは、我々AAICでも取り組んでいる方向性であり、日本企業も注力すべきなのでは?と強く感じています。

 

SANYのアフリカ事業を足早に俯瞰してきましたが、その強み、地域展開戦略、アフリカ市場への適応へのヒントなど、シンプルな示唆は得られたと思います。そして、中国ほどの国家的な支援を期待しにくい日本企業としては、より強みにフォーカスしたアプローチが必要になることも、あらためて強く感じることになりました。我々も、中国企業のアフリカ展開について、その強みを深堀りし、日本企業にフィードバックする活動を続けていく思いを新たにしたとも言えます。学び続けることになりそうです。

 

執筆:AAICパートナー(上海駐在)田中秀哉

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