自動運転とは
皆様は「自動運転車」と聞くとどのような車を思い浮かべられるでしょうか。
自動運転は一般的に「レベル0」を完全な手動運転とした上で、5つのレベルに分類されています。
レベル1(運転支援、フットフリー):ハンドル操作またはアクセル・ブレーキ操作の自動化
レベル2(部分自動運転、ハンズフリー):ハンドル操作とアクセル・ブレーキ操作の自動化
レベル3(条件付自動運転、アイズフリー):一定の条件ですべての運転操作を自動化、緊急時は運転者が引継ぐ必要
レベル4(高度自動運転、ブレインフリー):一定の条件ですべての運転操作を自動化、緊急時もシステムが応答
レベル5(完全自動運転、ドライバーフリー):条件のない完全な自動運転
自動運転の今
日本では昨年日産がレベル2に該当するハンズフリー機能プロパイロット2.0を搭載したスカイラインを発売、さらに道路交通法が改正されレベル3システムの公道走行に関するルールが規定されました。ホンダが今年レベル3機能搭載車両を発売予定とのニュースをご覧になった方も多いかと存じます。
世界に目を転じると、北米ではレベル2に該当する世界初のハンズフリーシステムSuper Cruiseを搭載した車両が2017年にGMにより発売されました。また欧州ではAudiが2017年に世界初となるレベル3システムであるTraffic Jam Pilotを搭載した車両を発売しました(※2019年末現在、同機能の当局承認は下りておらず利用は認められていない状況です)
この他、中国やその他の地域でも数多くの自動車メーカー、部品メーカーやベンチャー企業が自動運転技術の開発や実験に既に取り組んでいます。
ハンズフリー機能Super Cruiseを搭載したGM Cadillac CT6
自動運転車が従来の自動車と大きく異なるのは自動車が自ら道路や周辺の環境を認識・理解し、それに応じた制御を行うという点にあります。
自動車が自律的に走行する上で新たに必要になる様々な技術要素は様々ありますが、その一つにHD Map (High Definition Map)と呼ばれる高精度地図データがあります。現在の自動車にもルート設定やガイダンス機能を支えるナビゲーション用地図データが搭載されていますが、自動運転車は道路状況の把握とそれに応じた適切な制御を行うためにより細かな地図データを必要とします。自動運転車に搭載されるカメラ、レーダーやLiDAR等、周辺環境把握を行う様々なセンサーが不調な時や悪天候時、またカーブの先などセンサーが見えない場所を見通す「第二の目」となるのがこの高精度地図データです。上で述べたGMのSuper Cruise機能でも米Ushr社の高精度地図データが採用されていますが、2019年に日本のダイナミックマップ基盤株式会社がUshr社を買収したニュースは大きな話題となりました。
これまでの自動車と大きく異なる特徴的な構成要素の好例と言えるでしょう。
自動運転のこれから
レベル2、また一部レベル3機能を有する自動車が登場し始めている一方で、人間の関与が不要となるレベル4以上の高度自動運転の実現時期や規模については、想定されていた以上の技術的難易度から従来の計画を見直す動きも出てきています。
例えば元々自動運転に対して積極的な姿勢を見せていた配車サービス大手Uberですが、同社自動運転部門のChief Scientistは昨年4月、いわゆる高度自動運転車の本格的な展開にはまだ長い時間がかかるだろうとの見方を示しました。
高度な自動運転機能は乗用車よりもトラックなど商用車で先に実現するのではないかとの見方も出てきています。
Googleの自動運転部門WaymoのCEOは昨年10月、「自動運転の実用化は乗客を乗せる車両(ロボタクシー)よりも、特定ルートを繰り返し往復するようなトラックで先に実現するだろう」と発言しました。
今後の実現時期や形態については様々な見方がありますが、自動車産業の今後の発展のキーワードとされるCASE (Connected, Autonomous, Shared & Services, Electric)の一領域として、自動運転が重要な役割を担っていくことには変わりありません。
例えば2018年末のPwCの試算では、2030年には欧州、米国や中国で年間の自動車による総走行距離の40%前後が自動運転車によるものになるだろうと予測されています。
自動運転が社会に与えるインパクト
今後自動運転が高度化し、普及が進んでいくと世の中はどのように変わっていくのでしょうか。
その影響についてはあらゆる予想が行われていますが、ここではそのいくつかをご紹介したいと思います。
・自動車による交通事故の90%以上を占める人為的ミスによる事故が大幅に削減され、自動車保険の金額や設定方法も大きく変化する
・車両が駐車の必要なく循環することにより必要な駐車スペース面積が大幅に減少し、空いた土地の他の用途への活用が可能になる
・通勤や通学など、あらゆる移動時間が仕事・余暇・睡眠などの他の活動に充てられるようになる。車内がサービスや広告提供の場へと変わる
Googleの自動運転部門Waymoでは自動運転車内でWifiを提供して、乗客にインターネットサービスを利用してもらう構想を既にテストし始めています。
人の移動を根本から変える自動運転の影響は自動車産業に留まらず、小売・サービス、保険、広告・メディア、不動産などあらゆる産業にインパクトを与えるものと予想されています。
文章:AAIC (東京) 篠生春菜
(トップ画像出所:はhttps://www.youtube.com/watch?v=B8R148hFxPw)
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