AAIC|Asia Africa Investment & Consulting

生産農家のエンパワーメントが進む「世界のカカオ、チョコレート市場のトレンド」

日本では、カカオというとガーナに代表されるようなアフリカ諸国のイメージが強いかと思いますが、実際のカカオの生産量は、コートジボワール、ガーナに続いてインドネシアが世界第3位としてランクインします(図1)。

図1 世界のカカオ生産量(国別ランキング)

生産農家のエンパワーメントが進む 「世界のカカオ、チョコレート市場のトレンド」

そんなカカオの一大生産地がありながら、長らく東南アジアでは、Cadbury、Ferrero Rocher、 KitKat、 Hershey’sなどの欧米チョコレートブランドばかりが目立っていました。

しかし、昨今では東南アジア圏においてもローカルのショコラティエやチョコレートメーカーが出現し、チョコレート市場を巡る光景が変わりつつあります。そこで、今回はインドネシアのカカオやチョコレート市場を取り上げて、同市場の現状と将来について検討するとともに、最後にAAICグループが自社で進める取り組みについてもご紹介したいと思います。

インドネシアのカカオ市場はなぜ成長したのか?

歴史的にみると、インドネシアでは1970年代のカカオ価格の高騰をきっかけに、多くの小規模農家がカカオ生産に参入しました。インドネシアは「カカオベルト」と呼ばれる、北緯20度から南緯20度に位置し、特に、現在の国内生産量の75%程度を占めるスラウェン島の熱帯気候はカカオ豆の木の育成に最適な環境だったこともあり、わずか10-15年の間にインドネシアのカカオ生産量は世界第3位となりました。

その結果、カカオはインドネシアの主たる貿易産物となり、現在では外貨獲得に大きく寄与する産業となっています。

また、カカオ豆から皮を除き、すりつぶしたものからココアバターを除いたものが「ココア(パウダー)」となり、チョコレート等の原料になりますが(図2)、アジア太平洋地域ではココア市場も大きく成長しています。2022年時点で約20億ドル程度の市場が、今後も堅調に伸長し、2028年にはUSドル27億以上の市場になると予測されています(図3)。

図2 カカオ豆~ココアパウダーの生産工程

生産農家のエンパワーメントが進む 「世界のカカオ、チョコレート市場のトレンド」

図3 アジア太平洋圏におけるココア市場規模

生産農家のエンパワーメントが進む 「世界のカカオ、チョコレート市場のトレンド」

カカオ豆はチョコレートに代表される菓子やケーキ、ベーカリーといった食品への利用に加え、化粧品や医薬品、栄養補助食品に至るまで加工範囲が広いことから、この先も需要が続くと見込まれています。

このように、カカオ産業の急速な成長は国の経済にとっては好材料ですが、一方で、小規模農家にとってはカカオの販売価格の値引き圧力がかかります。その結果、非倫理的な貿易取引を扱う企業が多大な利益を生み出すと、生産農家が貧困を招くという悪循環が生まれるようになっていました。

小規模農家のエンパワーメントを実現する「Bean to Bar」とは?

これまで、カカオを生産する農園は大抵発展途上国や中所得国にあるため、何千キロも離れた欧州に原材料を供給し、そこで加工されていました。ところが、2010年代に突入すると消費者の食料の供給源への意識に変化が生じるようになり、食への透明性を重要視する傾向が高まり、やがてそれは産地や生産者の生活環境への関心や支持へと繋がっていきます。

同時期に、インドネシア政府もそれまで輸出していた未加工のカカオ豆に課税することで、国内焙煎という付加価値を加え、国内農家の保護に乗り出そうとします。しかし、カカオ生産国では小規模農家が生産を展開するのみで加工会社の規模や収容能力に限界があるため、消費者が求める良質のチョコレートの需要に応えられないという課題がありました。

そのような状況の中、チョコレートメーカーの中には豆の購入から粉砕、成形、包装、販売までの加工プロセスすべてを現地で行おうとする企業が現れます。それがいわゆる「Bean to Bar」という形態です。Bean to Barというのは、カカオ豆からチョコレートバーまで、すべての生産工程を一貫して自分たちで行うことです。産出地でカカオの収穫から加工、販売までを自社で垂直統合することで様々なメリットがあります。

  • プロセスすべてのステップの監視・管理が可能となることで、ファインカカオ(細部にこだわって作られた高価・高品質なカカオ)の生産が可能となり、その完成品は大量生産のものより健康的かつ高品質なものとして市場から評価される
  • さらに、サプライチェーンの管理が強化されることで、公平で人道的なビジネス慣行が保証されるため、児童労働や不平等な労働契約から解放される
  • その結果、農家買取価格と小売価格間で搾取されていた様々な中間業者の手数料が省かれ、カカオ農家の生活が改善する
  • そして、一般的にサステナビリティと環境保護の確保に大きく寄与する

チョコレート市場全体に占める割合はまだ小さいですが、地元の企業を支持する関心は徐々に高まっており、Bean to Barのチョコレートの市場は今後約10年で倍増すると予測されています(図4)。

図4 Bean to Barの市場予測

生産農家のエンパワーメントが進む 「世界のカカオ、チョコレート市場のトレンド」

例えば、マレーシアのChocolate Conciergeの創設者であるNing氏は、農園を丸ごと買い取ってBean to Barのプロセスを実現(図5)、カカオの品質を向上させると同時に生産量を最大化し、生産者の収益改善を実現しています。

図5 Chocolate Concierge社のBean to Barチョコレート

生産農家のエンパワーメントが進む 「世界のカカオ、チョコレート市場のトレンド」

この他、各国で生産農家の生産性改善の動きが活発になっています。例えば、Krakakoa社はスマトラと西スラウェシにある1,000を超えるカカオ農園と提携して栽培や焙煎方法の技術指導に乗り出しています。その結果、同社の提携農園では、市場より高い給与(2019年の農家のカカオ豆取引価格:1kg当たり約USドル2.97 →Krakakoa社の提携農家:1kg当たりUSドル4.03)を実現しました。

またBarry Callebaut社は彼らのサプライチェーンに含まれるカカオ生産者(インドネシアを含めたカカオ豆生産主要国)50万人を対象に、2025年までに国際フェアトレード認証の貧困ラインとされる一日当たりUSドル1.9の生活から脱却させる計画を立て、2019年~2020年においては約14万人の生活改善に成功しています。

日本企業の取り組みは?

Barry Callebaut社の2021年調査では、「チョコレートは生活を楽しむ贅沢品、或いは身体にとって良いものとしての個人欲求ばかりでなく、他の人(例えば生産者)や地球環境への意識も加わって「共生社会」として需要が高まってきた」ことを指摘しています。日本企業もこの先フェアトレードや環境を重視する世界潮流を意識した商品作りがより求められることになりますが、企業の中には既にそういう取り組みをしている企業も見られます。

例えば、明治の「アグロフォレストリーミルクチョコレート」は「森を作る農業」というコンセプトで、森林伐採の荒廃地に多種の農林栽培を展開する農法で作られています。自然保護のメリットはもちろんのこと、気候変動の影響で生産に不安がある農家に対して多種類の農作物栽培を前提としたことで、安定した収入の実現に貢献しています。

また、日本企業が技術や知識を伝授しながら、直接取引をした成功例としてDari Kが挙げられます。Dari Kは契約農家と直接取引をし、仲介業社を排除することで農家に対して通常の2~3割高い買い取り価格を実現しました。

日本にとって、今後インドネシアからの調達量を増やすことは、輸入コストを削減するだけでなく、アフリカや南米の天候不順による不作の場合の調達リスクを軽減することができます。現地の生産者コミュニティと協働することにより高品質カカオの安定した生産と付加価値のあるバリューチェーンを構築できれば、アジアの発展に寄与できるばかりでなく、これから拡大していくカカオの需要に対してサステイナブルな供給路も確保でき、日本と相手国双方にとって有益なWin-Winの関係を構築することができます。

AAICグループが進める農業はどのようなものか?

最後に、AAICグループの取り組みをご紹介します。AAICグループのRwanda Nut Companyでは、約200haの農園を保有し、マカデミアナッツの生産~加工・販売を行っています。自社の垂直統合モデルの他、周辺農家からナッツを買い取り、加工・販売することで、直接および間接的に現地農家のエンパワーメントにも寄与しています(図6)。

図6 Rwanda Nut Companyのマカデミアナッツビジネス

生産農家のエンパワーメントが進む 「世界のカカオ、チョコレート市場のトレンド」

同農園では、生産性向上のための技術指導や有機農法を採用することでの付加価値付けなどに取り組んできました。これらの取り組みはForbesなどのメディアでも取り上げられています。

さらに、高い品質の製品が認められ、サンフランシスコでシングルオリジンのカカオ豆にこだわった人気チョコレートブランドと共同で製品開発に取り組むなど、原材料の産地や生産農家へのこだわりの高まりを身をもって感じています。

また、今後は、規模を大きく拡大した第2農園を隣国へ展開することを計画しています。第2農園では、生産農家の収入改善はもちろん、日本の技術を用いて、医療、電気、水、教育といった生活インフラを整えることで、農村そのものをスマート化し、生活環境を改善する実験的な取り組みも検討しています。

オープンイノベーションのコンセプトのもと、アフリカのリープフロッグ・イノベーションに欠かせないスマートフォン技術、分散型インフラ技術、新エネルギー技術を導入することで、これまでにない新しいスマートなビレッジの実現が可能になると考えています。このような取り組みにご興味のある企業の方は、ぜひ一度弊社までお問い合わせください。

参考:Amazon Japanにおける販売はこちら、また弊社の詳しい事業紹介はこちらをご覧ください。

文章:AAICパートナー、AAIC日本法人代表/シンガポール法人取締役 難波 昇平

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